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「――……ああ、宮村君? 私だが」

極度の緊張と快楽から解放され、
意識がもうろうとしていた和波の耳に、
電話をかける榛原の声が届いてきた。

わずかな間だが、眠ってしまったのだろうか。

「急で悪いんだが、明日の朝は和波を
セレスティアによこさなくていい。
――そうだ、休みだ。彼にはもう伝えてある」

(なぜ……?)

蕩けた意識が少しずつ形をなし、現実が戻ってくる。

電話の向こうでマネージャーの小言めいた声がしているようだが、
榛原がそれを気にする様子はまったくない。
商品に手を出すなとあれほど言ったのに。キーッ!
「次からはちゃんと君を通すから。で、彼のその後の予定は?
――わかった。それには間に合うよう行かせる。では」
コラ。人の話聞けよ!
電話の内容が自分に関連したことだと気づき、
和波はゆるゆると体を起こした。

「あの……」

「すまない、起こしてしまって。
飲みなさい。喉がかわいただろう?」

榛原はサイドテーブルにあったミネラルウォーターのふたを開け、
それを和波の唇にあてがった。
いい大人が他人に飲ませてもらうなんて恥ずかしいが、
流れ込んでくる水が蜜よりもずっとずっと甘いものに感じられる。

「ん……」

安心して体を任せられる、
そんな素直な喜びに心も体も満たされていく。
水を飲み終えると、
榛原は指先で口の端の水滴をそっと拭ってくれた。

「悪いが君の仕事を邪魔させてもらったよ。
明日の朝はどうしても私が和波を独占したかったんだ」

「僕はずっと冬吾さんだけのものですよ」

「それは嬉しいんだが、君の音を待ってる連中がいるからね。
午後からのリハーサルには行きなさい。送っていこう」

今頃気づいたが、
どうやら自分は少々強引な性格の男に惹かれてしまう性質らしい。

「なんだかマネージャーが、二人もいるみたいです……」

「それも悪くないな。和波の予定は私が全部管理できるからね。
君の事務所の持ち株、調べてみようかな。
いっそ経営側に回ってしまえば――」

「だ、ダメですよ!」

「冗談だ。これ以上忙しくなったら和波に会う時間が減ってしまう」

頬をゆるめ、和波の髪をくしゃくしゃと撫でた榛原は
部屋の明かりを静かに落とした。

「あの日、和波が名前を知りたいと言ったバラはね、
ナエマという種類だったよ。
母が大好きで、モチーフとしてハープに特注で描かせた花だった。
大事なことを思い出させてくれてありがとう」

「あのバラに勇気をもらったのは僕の方です」

「疲れただろう? ゆっくり休みなさい」

「はい……」

抱きしめられた腕の中、
疲労した体に心地好い眠りが満ちてくる。
ナイトスタンドが灯すオレンジ色の仄かな光が
だんだん遠くなる……。

――明日の朝は、ピアノを弾いて冬吾さんを起こしてあげよう。
初めて出会った時のエチュードをピアノで弾いてみたなら、
彼はまたあの日のように、
懐かしそうな笑顔で喜んでくれるだろうか――……。

榛原の優しい匂いに包まれながら、
和波は夢うつつの中に天上の調べを聴いた。



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【2012/11/19 15:33】 |  天上の調べは愛を紡ぐ
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