上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。 新しい記事を書く事で広告が消せます。 |
![]() |
相手の心と体を手に入れるまでの過程を
楽しむことが恋だとしたら、 その苦悩を乗り越えるのが愛ではないだろうか。 榛原はいつでも「行くな」と言えたはずだ。 若い愛で傷つけ合った二人をもう一度切り離すなど、 きっと造作もないことだっただろう。 そうしなかったのは榛原が本当に自分のことを 愛してくれていたから、 それが彼の強さだったからだ。 「僕も彼も……ほんの束の間、過去の幻影を見ていただけです。 榛原さんの言った通り、 それぞれ生きる道がすでにあることは、 お互い最初からわかっていましたから」 ――迷った先にこそ見えるもの。 それが何なのか、今ならはっきりとわかる。 体をほどいた和波は、 曇りのない瞳でまっすぐに榛原を見つめた。 「好きです。……冬吾さんを、愛しています」 「君の返事を、私がどれだけ心待ちにしていたと思う?」 榛原の琥珀色の瞳が幸せそうに細くなる。 「今も、そして永遠に、君を愛してる。和波」 眼下に遠く、街の灯が揺れる。 めまいがしそうなほどの幸福感の中、 二人はどちらからともなく誓いの口づけを交わした。 <←36> <38→> 目次にもどる |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
| ホーム |
|