オリジナルBL小説、日記、同人誌のお知らせなど……
ぬるいですがR18です。
大人の方だけ下記からどうぞ。

















































オカシいのはお前だ、バ河合!
ここをどこだと心得てるんだ?

水色タイル剥き出しで昭和カラー全開の質素な作りとはいえ、
みんなで使う神聖な浴場だぞ。
一人勝手に欲情するんじゃない!

「ん……」

反論しようにも、強引なキスに言葉を封じられてしまった。

どうしよう。
ぬるま湯に全身を包まれて、浮力と河合の腕に身を預けるのが、ハンパなく気持ち良い。

頭では今すぐ河合をふりほどきたいのに、
唇は本能に従順に口づけを享受し、もっと欲しいとねだってしまう。

「全部俺のせいにしていいよ。俺のわがままに付き合わされたって事にしたらいい。志水は悪くない」

タイルの壁に反響した囁きの言葉が、頭の中で何度も何度も廻る。
全身にゾクリと鳥肌が立った。

「や、ヤダからな! 絶対に」

「どうして?」

湯船の中で焦れったそうに揺れる俺のモノを、河合の手がすかさず捕らえた。

「ひ、ァッ!」

「ふふっ、風呂に浸かってるのにお湯より熱くなってるな」

河合が意地悪く笑った。

包皮をめくり下ろされ、守るものを失った神経器官を、
河合が指の先でねちっこく撫で回す。

「つ、爪立てなっ…あぅ!!」

「大丈夫。傷つけたりしないから」

宥めるような声で囁いた後、
河合は、今にも破裂しそうな勢いで脈を打つ俺の頸動脈に、ねろりと舌を這わせた。

「んっ!」

マズイ。これ以上弄ばれたら負ける。
心の奥底に横たわるドロドロに融けた劣情に。

俺は快楽に弱い。
一度リミッターが切れると、取り返しがつかないくらい溺れてしまう。

河合が唆すままに操られて、頭がおかしくなってしまったのかと思えるほど
みっともない声を上げながら、淫靡で熱い泥の沼にとことん堕ちていく。

そして情けないことに、それが嬉しくて堪らないのだ。

こんな仕事してるんだし、もっとちゃんとしてなきゃならないのに。
いつ、誰に見らても恥ずかしくないよう、毅然としてないといけないのに、
今夜ここで、いつものあの状態になるなんて――。

――嫌だ!

「やめろって言ってるだろっ!!」

金属よりも尖った声が風呂場をぐるりと一周した。

「ごめん、志水」

ぶち切れて荒い息を吐く俺に、河合が手を伸ばす。

「触んな!」

「試すような真似して悪かった」

「試す…?」

さっきとは打って変わって、河合は真摯な目をしていた。

「志水はいつも本当の気持ちを隠してばかりだから、心配なんだ。俺」

感情のうねりに共振するみたいに、水面の月影がゆらゆら揺れる。
まるで月の揺らぎ具合が、俺と河合の心模様そのままを表してるみたいだ。

「そりゃあ確かに顔を合わせれば笑うし、よく喋る。
でも会いたいとか、ヤリたいとか、もっと一緒にいたいとか、
そういう人間らしい気持ちはいつも後回しだ」

う……。大人なんだからしゃーないだろ?
自分で公共性の高い仕事を選んだんだ。
それが当たり前だろ?

「だったらどうだってんだよ!」

食ってかかる俺を宥めようと伸びてきた河合の手を、苛立ち気味に跳ねのける。

雫が散る音と同時に、水面の月は絵の具を筆で乱暴に混ぜたようにぐしゃぐしゃになった。

もう元には戻らないんじゃないかと思うくらい散り散りになった光たちは、
波打つ湯に合わせてせわしなく上下する。

「志水は運行システムの一部じゃないよ。心を持った人間だ」

優しい言葉がタイルの浴室に静かに響く。

「わがままも独占欲も、愛し合いたいって思う人間らしい気持ちも、
俺にだけは素直にぶつけてほしい」

ダメだ。このままだと河合の優しさに流されちまう。

――できない。できないよ。

「言えるわけないだろ! こんな不定期でお堅い仕事で、こんな普通じゃない関係で。
大人だったら明日のこと考えて我慢するのが当然じゃないか!」

絶望感に満ちた叫びが浴室に響く。

水に映った月は再び一つに纏まると、
俺たちの諍いを案じているかのように、ゆらゆらと揺れていた。

「志水……。一緒に暮らさないか?」

「え…?」

驚いて河合と向き合う。
ぱしゃりとお湯が跳ねる音がした。

さざ波に踊らされた光が三日月の形にぐにゃりと歪むが、
またすぐ元通り丸く集まっていく。
まるで離ればなれになるのを嫌がってるみたいに……。

「一緒に暮らせば、夜勤とか早番とか、少なくともそういう時間のすれ違いはカバーできる。
それに何より――」

「?」

「俺が一緒にいたいんだ」

「……」

河合の真っ直ぐな目に射抜かれて、次の言葉が出ない。

河合はちゃんと逃げ道を用意してくれていた。
岩より頑固で、自分から絶対に「うん」とは言わない俺のために。

心に纏った貧弱な矜持を、河合の優しさに一つずつ剥ぎ取られていくみたいだ。
月明かりの下、体だけでなく心まで丸裸にされた俺は、
恥ずかしさのあまり、もう一度膝を抱いた。

「少し、考えさせてくれないか……」

「わかった」

満月の光に照らされた河合の微笑みは、いつも通り優しかった。


翌日、志水はベテラン運転士の田村に
「風呂は喧嘩する場所じゃない」と苦言を呈されるのであった……。

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更新が開いてしまい、申し訳ありません。
今回のお話、ちょっと苦しかったな…。
この二人にしては珍しく軽いエ○入りでした。

今さらで恐縮ですが、拍手のお礼ページを作ってみました
河合と志水の秘密のプロフィール入りです。
お楽しみください

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【2014/10/06 13:44】 |  シリーズ短編
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